「新リース会計基準」という言葉を聞く機会が増え、自社への影響や具体的な対応についてお悩みの経理・財務担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、新リース会計基準の概要から旧基準との違い、中小企業が取るべき対策までを、図解を交えて3分で理解できるよう分かりやすく解説します。この会計基準の最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティングリースを含め、原則すべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(BS)に計上する点にあります。適用対象や時期はもちろん、中小企業が活用できる短期リースや少額リースの例外規定についても詳しく解説。この記事を読めば、実務で必要な知識と具体的なアクションプランが明確になります。
新リース会計基準とは そもそも何?
新リース会計基準とは、簡単に言うと、これまで費用として処理できた一部のリース契約を、原則としてすべて資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上する新しい会計ルールのことです。国際的な会計基準である「IFRS第16号」や米国会計基準「ASC Topic 842」の内容を日本の会計基準に取り入れるために開発されました。この変更により、企業の財務状況がより実態に即して透明に表示されるようになります。
特に、これまで貸借対照表に載らなかった「オペレーティング・リース」を多用してきた企業にとっては、財務諸表に大きな影響が及ぶ可能性があるため、早期の理解と準備が不可欠です。
すべてのリースを資産計上する新ルール
新リース会計基準における最も重要な変更点は、借り手側の会計処理です。旧基準では、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類していました。
このうち、実質的に資産を購入したのと変わらない「ファイナンス・リース」は資産として計上(オンバランス)されていましたが、一般的な賃貸借契約に近い「オペレーティング・リース」は、支払うリース料を費用として計上するだけ(オフバランス)で済みました。
しかし、新基準ではこの区分が原則として廃止され、短期や少額といった一部の例外を除き、すべてのリース契約について、資産(使用権資産)と負債(リース負債)を貸借対照表に計上することになります。これにより、これまで費用処理のみでよかったコピー機のリースや社用車のカーリースなども、資産・負債として管理する必要が出てきます。
| リース契約の種類 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | オンバランス(資産・負債計上) | 原則オンバランス(使用権資産・リース負債を計上) |
| オペレーティング・リース | オフバランス(費用処理のみ) |
新リース会計基準が導入された背景と目的
この新しい会計基準が導入された背景には、大きく分けて2つの理由があります。
一つ目は、国際的な会計基準との整合性(コンバージェンス)を図るためです。海外ではすでにIFRS第16号などで同様のルールが適用されており、グローバルに事業を展開する企業や、海外の投資家が日本企業の財務状況を比較・分析しやすくするために、基準を国際標準に合わせる必要がありました。
二つ目は、財務諸表の透明性を高め、実態をより正確に反映させることが目的です。旧基準のオペレーティング・リースは、多額の契約を結んでいても貸借対照表には表示されないため、「簿外債務」や「隠れ負債」と見なされることがありました。投資家が企業の本当の負債規模を把握しづらいという問題点があったのです。新基準によってすべてのリースが原則オンバランス化されることで、企業の財政状態がより明確になり、投資家はより適切な投資判断を下せるようになります。
【図解】新リース会計基準と旧基準の4つの違い
2019年1月以降に開始する事業年度から順次適用が始まった新リース会計基準(IFRS第16号、日本の会計基準では企業会計基準第16号「リース」)は、従来の会計処理を大きく変えるものです。特に借手側の会計処理に大きな変更があり、企業の財務諸表に与える影響は少なくありません。ここでは、旧基準との主な違いを4つのポイントに絞って、図や表を交えながら分かりやすく解説します。
違い1 ファイナンスとオペレーティングの区分廃止
旧リース会計基準における最大の特徴は、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類していた点です。この分類によって、会計処理が大きく異なっていました。
- ファイナンス・リース:リース契約が実質的に資産の購入と資金の借入れを組み合わせた取引とみなされるもの。原則として資産・負債を貸借対照表(BS)に計上する「オンバランス処理」が行われます。
- オペレーティング・リース:ファイナンス・リース以外のリース取引。一般的な賃貸借契約と同様に扱われ、資産・負債を計上しない「オフバランス処理」が認められていました。
新リース会計基準では、借手側の会計処理において、このファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が原則として廃止されました。これにより、ほとんどのリース契約が単一の会計処理モデルに統合されることになったのです。なお、貸手側の会計処理については、従来通りファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類する方法が維持されています。
違い2 原則すべてのリースがオンバランス化
前述の区分廃止に伴う最も大きな変更点が、原則としてすべてのリース契約を貸借対照表(BS)に計上する「オンバランス化」です。旧基準では、多くの企業が利用していたコピー機や社用車などのオペレーティング・リースは、BSに計上されないオフバランス取引でした。そのため、企業の財務状況を評価する際に、BSに載らない潜在的な債務(リース料支払義務)が見えにくいという問題点が指摘されていました。
新基準では、この問題を解消するため、短期リースや少額リースといった一部の例外を除き、すべてのリース契約について「使用権資産」と「リース負債」をBSに計上することが義務付けられました。これにより、企業の資産と負債の実態がより正確に財務諸表に反映されるようになります。
| リースの種類 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | オンバランス(資産・負債計上) | 原則すべてオンバランス (使用権資産・リース負債を計上) |
| オペレーティング・リース | オフバランス(資産・負債計上なし) |
違い3 損益計算書(PL)に計上される費用項目
オンバランス化に伴い、損益計算書(PL)に計上される費用の内容も変わります。旧基準のオペレーティング・リースでは、支払リース料を「支払リース料」や「賃借料」などの勘定科目で、発生の都度、費用として計上していました。リース期間中は、基本的に毎期同額の費用が計上される定額での処理が一般的でした。
一方、新基準では、計上した資産・負債に対応する費用を計上します。具体的には、BSに計上した「使用権資産」に対する減価償却費と、「リース負債」に対する支払利息の2つを費用として計上します。支払利息はリース期間の当初に多く、期間の経過とともに減少していくため、費用総額はリース期間の初期に大きく、後半になるにつれて小さくなる傾向があります。
| 項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 計上される費用 | 支払リース料(賃借料など) | 減価償却費 + 支払利息 |
| 費用の性質 | 販売費及び一般管理費(営業費用) | 減価償却費(営業費用)+ 支払利息(営業外費用) |
| 期間損益への影響 | 原則として定額 | 当初は大きく、徐々に減少(逓減) |
違い4 財務諸表に与えるインパクト
これまでの変更点を踏まえると、新リース会計基準は企業の財務諸表全体に大きなインパクトを与えます。特にこれまでオペレーティング・リースを多用してきた企業ほど、その影響は顕著になります。
- 貸借対照表(BS)へのインパクト:
使用権資産とリース負債が同時に計上されるため、総資産と総負債がともに増加します。これにより、自己資本比率(自己資本÷総資産)が低下したり、負債比率(負債÷自己資本)が上昇したりと、安全性を示す財務指標が悪化する可能性があります。 - 損益計算書(PL)へのインパクト:
費用が「支払リース料」から「減価償却費」と「支払利息」に変わることで、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)が増加する傾向にあります。これは、支払利息が営業外費用として扱われるためです。ただし、経常利益や当期純利益への影響は、長期的には旧基準と大きな差は生じません。 - キャッシュフロー計算書(CF)へのインパクト:
リース料の支払額は変わりませんが、その表示区分が変更されます。旧基準では支払リース料全額が営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)のマイナスでしたが、新基準ではリース負債の元本返済部分が財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)、利息部分が営業CFのマイナスとして表示されます。これにより、営業CFが改善し、財務CFが悪化するように見えます。
このように、新リース会計基準は単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の財務戦略や資金調達、設備投資計画にも影響を及ぼす重要なルール変更といえるでしょう。
新リース会計基準の適用対象と時期
「新しい会計基準と聞いても、うちの会社に関係あるの?」「一体いつから対応が必要なの?」こうした疑問は、経理担当者にとって最も気になるところでしょう。ここでは、新リース会計基準がどの企業に、いつから適用されるのかを具体的に解説します。自社の状況と照らし合わせながら、対応準備のスケジュールを立てる参考にしてください。
適用対象となる企業とリース契約
新リース会計基準の適用対象は、企業の規模や採用している会計基準によって異なります。まずは、どのような企業が対象となるのかを見ていきましょう。
原則として、金融商品取引法の適用を受ける上場企業や、会社法上の大企業が主な適用対象となります。具体的には、以下の会計基準を適用している企業が該当します。
- IFRS(国際財務報告基準)を任意適用している企業
- 米国会計基準(U.S.GAAP)を適用している企業
- 日本の会計基準を適用しているすべての上場企業・大企業
一方で、現時点では中小企業会計指針などを適用する中小企業への強制適用は見送られています。ただし、親会社が上場企業である場合、連結決算の過程で子会社も対応を求められるケースがあるため注意が必要です。
また、対象となるリース契約は、これまで「オペレーティング・リース」として費用処理していたものを含め、原則としてすべてのリース契約が対象となります。これには、コピー機や社用車といった有形の資産だけでなく、ソフトウェアのライセンス契約なども含まれる可能性があります。ただし、後述する「短期リース」や「少額リース」といった一部の例外規定も設けられています。
いつから強制適用されるのか
新リース会計基準の適用が開始される時期は、採用している会計基準によって異なります。特に日本の会計基準を適用している企業は、今後のスケジュールを正確に把握しておくことが重要です。
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2023年5月に公開草案を公表し、適用時期を明らかにしました。各会計基準における適用開始時期は以下の通りです。
| 会計基準 | 強制適用の開始時期 | 備考 |
|---|---|---|
| IFRS(第16号) | 2019年1月1日以後開始する事業年度 | 既に適用済み |
| 米国会計基準(ASC第842号) | 2019年12月15日より後に開始する事業年度 | 既に適用済み |
| 日本基準 | 2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から(予定) | 早期適用も認められています(2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用可) |
このように、IFRSや米国会計基準を適用している企業ではすでに新基準での会計処理が始まっています。日本の会計基準を適用する上場企業などは、2026年度からの強制適用に向けて、今から準備を進めていく必要があります。自社の決算期を確認し、いつから対応が必要になるのかを正確に把握しておきましょう。
中小企業が新リース会計基準で取るべき3つの対策
新リース会計基準への対応は、特にこれまで多くのリース契約をオフバランス処理してきた中小企業にとって、経理業務や財務諸表に大きな影響を与えます。決算期が迫ってから慌てることがないよう、計画的に準備を進めることが不可欠です。ここでは、中小企業が具体的に取るべき3つの対策をステップごとに解説します。
対策1 社内のリース契約を網羅的に把握する
新基準対応の第一歩は、自社が締結しているすべてのリース契約を正確に洗い出し、管理台帳を作成することです。これまで費用処理していたオペレーティング・リースも資産計上の対象となるため、契約内容の把握が極めて重要になります。
まずは、経理部門だけでなく、総務、営業、ITなど、契約に関わる全部署に協力を仰ぎ、コピー機や社用車、PC、ソフトウェア、不動産(オフィスや店舗)といった賃貸借契約書をすべて収集します。その上で、以下の項目を含むリース契約管理台帳を作成し、情報を一元管理しましょう。
| 管理項目 | 確認内容 |
|---|---|
| リース物件情報 | 物件の名称、種類、数量など |
| 契約相手先 | リース会社の名称、連絡先など |
| リース期間 | 契約開始日、終了日、解約不能期間 |
| リース料 | 月額リース料、リース料総額、支払スケジュール |
| 契約オプション | 購入選択権、契約延長選択権、中途解約条項の有無と条件 |
| その他 | 維持管理費用など、リース料に含まれないコストの有無 |
特に、「賃貸借契約」という名称であっても、実質的にリースに該当する契約が含まれている可能性があるため、契約内容を詳細に確認する必要があります。この洗い出し作業が、後の会計処理の正確性を左右する重要な基礎となります。
対策2 会計処理方針を決定し業務フローを整備する
リース契約の全体像が把握できたら、次にそれらを新基準に沿ってどのように会計処理するかの社内方針を決定し、それに伴う業務フローを構築します。
まず決定すべきは、会計処理の具体的な方針です。新リース会計基準では、中小企業の実務負担を軽減するための簡便的な処理が認められています。例えば、リース期間が12ヶ月以内の「短期リース」や、リース資産の価値が低い「少額リース」については、資産計上しない例外処理が可能です。どの範囲まで例外規定や簡便法を適用するのかを、自社の状況に合わせて事前に決定しておくことで、その後の処理がスムーズになります。
方針が固まったら、新しい業務フローを整備します。具体的には、以下の点を明確にしましょう。
- 担当者の決定: 誰がリース契約情報を収集し、資産計上額を算定するのか。
- 計算プロセスの確立: 使用権資産とリース負債の計上額をどのように算定するか。特に、リース負債の割引計算に用いる割引率をどう設定するかは重要なポイントです。
- 仕訳起票ルールの策定: 契約時、決算時(減価償却費・支払利息の計上)、リース料支払時など、各タイミングでの仕訳ルールをマニュアル化します。
- 部門間連携の強化: 新規でリース契約を締結する際は、契約内容を経理部門へ速やかに共有するルールを徹底します。
これらの業務フローを事前に整備しておくことで、担当者による処理のばらつきを防ぎ、決算業務の混乱を回避できます。
対策3 会計システムの対応状況を確認する
新リース会計基準では、使用権資産の減価償却計算やリース負債の利息計算など、複雑で継続的な管理が必要になります。Excelやスプレッドシートでの手作業管理は、契約件数が増えると煩雑になり、ヒューマンエラーのリスクも高まります。
そのため、現在利用している会計システムが新リース会計基準に対応しているか、早期に確認することが極めて重要です。まずは、会計システムのベンダー(例: 勘定奉行のOBC、弥生会計、freee会計など)の公式サイトを確認したり、サポートデスクに問い合わせたりして、対応状況を確認しましょう。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 新リース会計基準への対応の有無
- 対応している場合、どのバージョンから対応しているか(バージョンアップが必要か)
- リース資産管理機能の有無と、その具体的な機能(計算、仕訳作成など)
- 追加のライセンス費用やオプション料金が発生するか
もし既存のシステムが対応していない、または対応予定がない場合は、以下の選択肢を検討する必要があります。
- システムのバージョンアップまたはリプレース(入れ替え): 新基準に対応した最新バージョンへの更新や、他社会計システムへの乗り換えを検討します。
- リース管理に特化した専用システムの導入: 既存の会計システムと連携できるリース管理システムを別途導入し、計算や管理を効率化します。
- Excelなどでの管理: リース契約が数件程度と非常に少ない場合に限り、当面はExcelで管理することも選択肢となりますが、将来的な契約数の増加や属人化のリスクを考慮する必要があります。
システムの対応は時間とコストがかかる場合があるため、決算期直前ではなく、できるだけ早い段階で方針を決定し、準備に着手することをおすすめします。
知っておきたい例外規定 短期リースと少額リース
新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約を使用権資産とリース負債として資産・負債計上(オンバランス化)する必要があります。しかし、すべてのリース契約に対して厳密な会計処理を求めることは、企業の実務負担を過度に重くする可能性があります。そのため、実務上の負担を軽減する目的で、特定の条件を満たすリース契約については、例外的な会計処理(簡便な処理)が認められています。
この例外規定の対象となるのが「短期リース」と「少額リース」です。これらのリースに該当する場合、企業は新リース会計基準の原則的な処理(使用権資産とリース負債の計上)を行わず、従来通り支払ったリース料を費用として計上する「賃貸借処理(オフバランス処理)」を選択できます。
例外が認められる2つのケースとは
短期リースと少額リースの具体的な要件と会計処理について、詳しく見ていきましょう。どちらの例外規定を適用するかは、企業の会計方針として選択することになります。
短期リース
短期リースとは、リース期間が12ヶ月以内のリース契約を指します。例えば、展示会のために3日間だけ借りるイベント機材や、繁忙期に6ヶ月間だけレンタルするPCなどが該当します。
ただし、単に契約期間が12ヶ月以内であればよいわけではありません。契約に「購入オプション」が含まれており、その権利行使が合理的に確実と見込まれる場合は、短期リースには該当しないため注意が必要です。
少額リース
少額リースとは、リースする資産そのものの価値が低いリース契約を指します。国際的な会計基準(IFRS第16号)では、新品であった場合の価額が5,000米ドル以下を一つの目安としていますが、日本の会計基準では明確な金額基準は定められていません。そのため、企業が自社の状況に応じて重要性の観点から金額基準を設定することになります。
この判断は、個々のリース資産単位で行います。例えば、1台30万円のコピー機1台のリースは少額リースに該当する可能性がありますが、1台8万円のPCを50台まとめてリースするような契約の場合、個々のPCが少額であるため、全体としても少額リースの例外を適用できると考えられます。
| 項目 | 短期リース | 少額リース |
|---|---|---|
| 判断基準 | リース期間(12ヶ月以内) | リース資産の価値(個々の資産が少額か) |
| 具体例 | ・プロジェクト用の短期レンタルオフィス ・イベント用の音響機材 | ・PC、タブレット、スマートフォン ・オフィス家具(机、椅子など) |
| 会計処理 | 支払リース料を費用として計上(賃貸借処理・オフバランス) | |
| 注意点 | 購入オプションの有無に注意が必要 | 金額基準は企業が独自に設定する必要がある |
中小企業が利用できる簡便的な会計処理
新リース会計基準の導入は、特に経理部門の人員が限られる中小企業にとって大きな負担となり得ます。そこで、「中小企業の会計に関する指針」の適用対象となる中小企業については、当面の間、従来の会計処理を継続することが認められています。
これは、新リース会計基準を強制適用せず、これまで通りファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分し、オペレーティング・リースについてはオフバランス処理を続けることができるというものです。
具体的には、以下のいずれにも該当しないリース契約は、オペレーティング・リースとして賃貸借処理が可能です。
- リース期間中の総リース料が、その資産のおおよその購入価額以上になる(フルペイアウト)
- 解約不能なリース期間が、その資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上である
この簡便的な処理により、多くの中小企業は直ちに新基準への対応を迫られるわけではありません。ただし、将来的に取引先や金融機関から新基準に準拠した財務諸表を求められる可能性や、今後の会計基準の変更に備え、自社にどのようなリース契約が存在し、新基準を適用した場合にどのような影響があるのかを把握しておくことが非常に重要です。
まとめ
本記事では、新リース会計基準の概要から旧基準との違い、そして中小企業が取るべき対策までを解説しました。新リース会計基準の最も重要なポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(BS)に計上する点です。これは、企業の財務状況をより実態に即して透明性高く開示することを目的としています。
この変更により、特にリース契約を多用する企業では総資産が増加し、自己資本比率などの財務指標が悪化する可能性があります。そのため、適用対象となる中小企業は、今のうちから「社内の全リース契約の網羅的な把握」「会計処理方針の決定と業務フローの整備」「会計システムの対応状況の確認」という3つの対策を計画的に進めることが不可欠です。
ただし、実務上の負担を考慮し、短期リースや少額リースといった例外規定や、中小企業向けの簡便的な会計処理も用意されています。自社の状況を正確に把握し、これらの規定を適切に活用しながら、適用開始に向けて万全の準備を整えましょう。